2017年08月16日

五五菊しんぶん 第9号

 きのうの給食の時間、みんなが食べ始めてしばらくしてから、
「なんじゃこのパン.変な味じゃなあ」
 と誰かが言い出した.
 また、
「まずくて食えねえじゃんか」
「捨てちまおうよ」
 などと言い、中にはゴミ箱に投げ捨てようとした人も.

 すると、谷口くんが、
「もったいない.捨てるんならぼくにくれ」
 と言いました.すると何人かが、「それならくれてやる」と、谷口くんの机の上にパンを置きました.谷口くんはうれしそうに紙に包みました.

 そのとき、校内放送が、
 「本日の給食に出ているパンはいつもと違う味がしますが、これはパンに塩が入っていないためです.ふつうに食べてもだいじょうぶですから、そのまま食べてください」
 と言いました.すると誰かが、
「何だ、食えるのか.ほんだらオラも食うわ」
 と言って、谷口くんからパンを取り返し、せっかくのパンが、あっという間に無くなりました.

「なんじゃこのパン.変な味じゃなあ.これはパンに塩が入っていないためです.ふつうに食べてもだいじょうぶですから、そのまま食べてみよう」
 と思って食べていた仲間は何人いましたか.手をあげて!

(記事 五年五組 藤原しづ)

posted by ゆふづつ at 11:38| ノンカテゴリー | 更新情報をチェックする

2017年08月02日

五五菊しんぶん 八

昨日 福山くんが転校した.尾も白い人物だった.かれが四年生のとき、2組に転校して来たときのことをよくおぼえている.

 たしか岡田先生がこう紹介していた.かれの家は大阪のなんとかという町でお茶屋をやっていたが、となりの家が火事になり店が焼けた.それをしおに店をたたみ東京に出たが、母親の実家であるそこも住みづらく、温泉のあるこの町へ隠居しに来たそうである.

 知っている人もいるだろうが、彼の父親も母親も年をとっている.かれは母親が三十八歳、父親が六十歳のときに生まれた子だそうである.そのせいか福山くんも何か年寄りくさかった.体が小さいのに言葉がていねいで、ちょっと関西なまりがあるので、話すたび皆に笑われていた.かれ自身もそれを楽しんでいるようだった.

 ある算数の時間に、岡田先生が例によって「何か質問は?」ときくと、ふだん手をあげることのない福山くんが手をあげた.算数の問題が難しくて、皆よく分からなかったので、みんなもきっとそれを聞くのだろうと思ってかれを見た.しかし彼の質問は一言、「せんせい、うんこしに行ってもいいですか」

 教室中が笑いに包まれた.彼にとっては一番大事な最初にして最後の質問.

 かれは転校の理由を明かさなかったが、もういないのだから話してもいいはずだ.じつは彼のお父さんが原因不明の病気にかかり、故郷の加賀へ帰るのだと言ったことがある.今はもうその列車に載っているだろう.加賀にはお父さんの先祖のお墓がある.かれもそこへ入りたいのだと言った.

 さようなら.おぢいちゃんの福山くん.もう君と話すことができないのがさみしい.

(記事 五年五組 藤原しづ 福山くん旅立の日に)

posted by ゆふづつ at 19:29| ノンカテゴリー | 更新情報をチェックする

2017年07月19日

五五菊しんぶん 七

 私の名字の話。生まれた時は吉野。

 しかし母親が家を出て村岡の名字にもどった。

 私もいっしょに出たから村岡になるはずなのに、母は「お前は吉野の家の子だから吉野のままでいい。父親が吉野だというのは消えてなくならない」と言い張る。

 しかし知りもしない吉野の家の名で呼ばれるのもへんなものだ。私が生まれたのは母が千葉の家へ行ったあとだった。父親がどんな人なのかも知らない。

 しかし今は母が入院療養中なので私は一人。藤原という人に預けられている。だから私も藤原を名乗っている。

 しかしその藤原も若くはない。いづれ嫁に出さなければならない。それが藤原のために必要だ。そのときは私もまた別の誰かのせわになるようだ。それは定めのようなものであるか。ぜひもなし。

 さて次の名字はどうなるだろうか。寂しくもあり、恐くもあり、楽しみでもある。

(記事 五年五組 藤原しづ なんちゃってな)

posted by ゆふづつ at 21:25| ノンカテゴリー | 更新情報をチェックする