何か一つの物が正しいとするなら、自然は隨分と無駄なものを造ったことになる。
しかしそんな馬鹿なことはあるまい。と我々の常識は考へる。ひとりひとりみんな違ふのは、何か神妙な理由があるに違ひない。ブスに生まれた女は神樣は不公平だと怒る。アホに生まれた男は神も佛もないと泣くだらう。しかし泣いても喚いても、我々は自分以外の物にはけして成れないのだ。
この覺悟が定まったときから、人の眞ともな人生は始まる。しかし定まらないまま一生を終へる者も多い。その差は“やはらか”かどうかにかかってゐる。
堅い者は直ぐに折れ、もう立ち直ることが出來ない。しかし柔らかい者は百八十度に折られても、元に戻る亊が出來るのだ」
「まるで形状記憶物質みたいだね」
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