「いったい意味のあるものに陸なものはない。意味があるといふことは人間にも意味があるといふに過ぎないから、底の知れたものなのだ。
假に僕が物好きにも二神について巧みな理論でも考へ、タカミムスビの迦微がプラスで、カミムスビの迦微がマイナス、この二つの神の総和の絶對値が量子論的な確率世界で無限大の差を作ったとき、この宇宙は誕生したのだと説明でもしたところで、だからどーなんだと言はれたらそれまでの話だ。
ものはいくら正確に説明したところで、その前提となる條件が必要な以上、その前提條件の生じた理由の説明が必要になるから、結局はどこかで疑問の打ち止めにしなければならない。結局、初めから何も説明しない我國の神話が如何に優れてゐるかが分かるだらう。
といふより、神話を普通の常識で分かると考へるのがそもそもをかしい。さう考へるのは、神話などワケの分からない與太話だと考へるのと同じぐらゐ馬鹿げてゐる」