2011年04月30日

くら 十一

「それにカハヂさんにもどうにかなって欲しいはよね。溺れた福子ちゃんのお母さんを助けたのもカハヂさんなんだし」

「もしカハヂさんがゐなかったら、雪子さんも助からなかったかも知れない。結果的には殘念なことになったにしても、あの十何年で彼女が受けた獻身がどれほど大きかったことか」

「カハヂさんのことは、福子ちゃんもよく知ってゐるのですね」

「知ってゐるどころか。休みの日なんか、ときどき遊びに行ってゐるみたい。カハヂさん、その靜って女の亊も、初めセンタアに相談したらしいの、電話で。そしたら福子ちゃんが出たから喫驚したって」

「そもそも一家が小野に引越したのだって、カハヂさんとの附合ひがあったからなんだらう。選りにも選ってあんな山の上に越すなんて、初め聞いたときは本當に驚いた」

「だからカハヂさんが年を取って來て、一人でゐるのが心配なのよ。いくら丈夫だからって、ああして毎晩醉っ拂ってる。ある日、行ってみたら……なんて、縁起でもないことを想像する。なにしろ醫者にも通ったことが無い人なんだから」



posted by ゆふづつ at 00:00| 日記 | 更新情報をチェックする