「三十二ぐらゐ。ちゃうど娘みたいな年頃だから、カハヂさんに可愛がられたのは好いんだけれど、居座る内にだんだん圖々しくなって、朝から晩まで何も働かない癖にお酒だけはカハヂさん竝。しまひに愛想を盡かされちゃったってワケ」
「それぢゃ仕方ないんぢゃないか。追んだされても文句は云へない。君はなんでカハヂさんの肩を持つんだ」
「私は持ってはゐない。どっちでもいいんだけれど、カハヂさんもそろそろ年だし、それにその靜っていふ女、鐵坊の同級生だし、派遣でセンタアに勤めてゐたこともある。聞いて見ると、なかなか苦勞した育ちみたいだし、丸っ切り惡い女ぢゃない氣もする」
「しかしカハヂさんにその氣が無いなら無駄だらう。早く眞面目に働いて、別の男を見つけたらどうなんだ」
「そんな器用に生きられるぐらゐなら、今更こんな風にはなってない」
「そらさうだ」