2011年02月28日

かぜ 二

「明日は笠掛小の五年生が來るんだって」
 と着替への太郎さん。カアテンの向うから尋いた。
「あぁ、そんな話をしてたね、大倉さんが」
 大倉はセンタアの理事、センタア財團事務の統括者として常勤してゐる。

 衞視椅子の岩村兼男が、「及川の芝生で晝飯でも攝られたら、後始末が大變だ」と話に割って入った。岩村太郎とは同姓だが赤の他人であるらしい。「近頃の先生は自由とか放任とか言って優しすぎるからね」

 すると太郎さんの低い聲が、「芝生で晝飯を喰ふって、誰が言ったんだ」と應じた。太郎さんは六十過の嘱託待遇だが、
「いやいや、多分って話ですよ」
 兼男の方はまだ四十前。行く行くは正社員に登用されるらしい。

 しかしそんなことは知らぬ太郎さんも、兼男の出過ぎた口は氣に入らぬやうだ。「多分なんていい加減な話をするな」とカアテンの向うで血が騰ってゐる。二人の入社時期は一月も違はぬが、相性が合はぬものは仕方がない。苦笑ひの兼男に目配せを送って遣る。

 
posted by ゆふづつ at 22:00| 日記 | 更新情報をチェックする