2011年01月30日

小野 八

 及川の橋を渡り、天端のサイクリングロードへ上がる。ゴオルデンヰイクとあって、ランニングのおぢさんや自轉車に乘った子供達が見える。河川敷も一面が緑に染まり、その中をしづかな白い絲が猶預ふてゐる。

 足はその白い絲を辿りながら、自づと川上へ遡った。やがて新しい由水小學校のヘンスと校庭、三階建の校舎が見える。そのヘンスの盡きた邊りは昔の野原だったが、今は音樂堂が出來るとかで、巨大なテント樣の工事シイトが張られてゐる。

 二十年近く前のあの日から、この邊りだけは時間の進みが遲いやうで、景色が一變してゐるにも關はらず、まだ當時の時間と空氣が猶預ふてゐる。福子がわざわざこんな場所で働いてゐるのも、やはり偶然ではあるまい。彼女の心もまたこの邊りに猶預ふてゐるのは間違ひがあるまい。

 そのサアカス小屋のやうなテントを左に見ながら、新しい市道に沿って行くと、やがて市の文化センタアの正門に着いた。御影石の大きな建物があり、嚴しい鐵冊に圍まれてゐる。
posted by ゆふづつ at 22:00| 日記 | 更新情報をチェックする