2017年03月20日

花火 十三

 白にK斑が一匹、鯖トラが二匹、南側の窗邊で日向ぼっこをしてゐる。白にK斑は蓋の開いた湯船の水に飛び込んだのでボチャと呼ばれてゐる。鯖トラの一匹は臆病でギョロ目だからギョロ、もう一匹の鯖トラはよく鳴くのでニャオと呼ばれてゐる。みんなヲスである。ただし玉は拔いてある。

 ボチャが云ふ。
「今日は休みらしいのに、二人ともでかけちゃふなんて」

 ニャオ
「さうだな。初めてぢゃないか。あんなボロ自轉車で坂を轉げたらどうするんだ」

 ボチャ
「さうだな。俺たちみたいに家でゴロゴロしてゐる方が無難だな」

 ニャオ
「さうだよ。外は猫又といふのがゐて、俺たちみたいなのはイチコロで喰はれちまふさうぢゃないか」

 ボチャ
「その話はアテにならない。靜が云ったんだらう。あの子は作り話が多い。もし猫又といふものがゐるなら、俺たちも一遍ぐらゐは見てゐる筈だ」

 ニャオ
「いや分からんぞ。俺たちみたいに家の中に閉じ籠もってゐたら何も知らんかも知れない。カツや靜の話を聞いたら、世の中は案外もっと廣いやうな氣がする」

 ボチャ
「おい、お前はどう思ふんだ」

 ギョロ
「さあな。どうでもいい。それより何かカツヲの生節でもお土産で買って來るといいな」

 ニャオ
「ああ母ちゃんが戀しい」

 みたりは昨年の九月に亡くなった母親のお墓を眺めた。それは窗の外の東の金木犀の下にあった。

posted by ゆふづつ at 23:26| ノンカテゴリー | 更新情報をチェックする

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