2012年10月21日

タク

 割れたガラス代のつもりか。郵便局からお誘ひがあった

 通りを北に上り、大通りをやや左に上った邊り。外からは見えないが、石塀の向かうに大きな屋敷がある。むろん例の馬鹿息子もゐる

 が、靜を見るとどこかへ消えた。布を掛けた大きなテーブルに、目も眩むやうなご馳走が竝ぶ。チラシ壽司だけ見たことがあるが、その他は初めてのもんばっか

 まぁまぁタクの子が、いつも煩くてご迷惑をおかけして。どんどん叱ってやって下さいね、どうぞ御遠慮なさらずぅ。元氣ばかりが取り柄の、やんちゃ坊主なんざますから

 なんだ。ここの子ぢゃなかったのか。タクの子?タクって何。變なアクセントだね。しかしオメェの子ぢゃねぇと分かったら、どんどんぢゃねぇ、がんがん撲ってやるからな




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2012年10月20日

士農工商

 晝ごはんを食べてゐたら

 カチャン、ドスン、パリパリ、コロンコロンと、すごい音がした。ふだんは氣取ってゐるシルベスタが、吃驚して口を開けた。あんまり可愛くない

 また郵便局のガキが野球の玉を打ち込んだ。そのうち玉を取りに來るだらうから、今度はとっちめてやりたい。けどシルベスタは文句を言へない。士農工商だか何だか、シルベスタは最低らしいのだ

 しかし、かういふ亂暴をするやつは、神經が緩んでゐる。自分が面白ければ他人の迷惑は顧みない。といふより、そもそも顧みる神經がない

 をばさん、ごめん

 と、やっぱり、郵便局の息子

 あぁ、怪我はなかったかい。今度から氣をつけてね

 と、ていねいに玉を返してやる。また、やるぞ、屹度、あの馬鹿




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2012年10月19日

善男

 ごめんよ

 と入り口に男が立った。滅多に人の來ない家。どきっとするぜ。おまけに、白いシャツのやうなものに紺色の變なズボンを履いてゐる

 ちょっとみさせてもらふよ

 ちょっとだけだからな

 男は草履を脱ぎ、上がって來て、流し臺の下を覗いた。ははぁ、ネズミ避けの修理に來たのかな。しかしいつまでも見てるだけで直さうとしないから

 をぢさん。早く直してよ

 は。今日は寄っただけさ。こんなのは直したこともない へへへ

 と頼りないことを云ふ。なんだ。紛らはしいことするからさ。こっちは虚しい期待を抱いちまったよ。それにしても、目元の涼しい、好い男

 尤もネズミやゴキブリを苦にするのはシルベスタだけだから。いいよ。をぢさんの顏を見ただけで氣持ちよかったし




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