2012年10月25日

炊事器

 その日からネズミゴキブリに解放されたシルベスタは、新品のスイジキといふのを持ち歸った。金の筒のやうなものだが

 電氣屋が自分で使はねでどうする?と社長が言ふから、この家にはミキサやデンキコンロなど、小さな電化製品が揃ってゐる。言ひ出しの社長の家にはセンタッキやらレーゾーコやら巨きなものも竝んでゐる

 ふぅん。何するけ?

 御飯炊くだべさ

 こんなちっちゃなんで焚けるけ?

 炊けねでどうする。これなら靜にも出來る。面白いぞぉ。スヰッチポン!

 人にやらせるつもりだな。 まぁいいや。これで御飯を炊く手間も省けるし、なんだか豆炭で炊くより美味しくなりさうな氣もする



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2012年10月23日

股引

 家へ歸ったら、こないだの大工が來てゐた。今日はこざっぱりと白いシャツにKい股引。筋の多い體にスラっとした脚。かっちょえぇ

 あらまぁ本當に來て下さったの。シルベスタも大恐縮で座蒲團など出すが、股引男は流しの下に潜り込み、パリパリっと床板を剥がし始めた

 その見事なお手竝に見惚れる間もなく、大きく開いた穴に用意の板切れをはめ込み、掌の底でトントン。一丁上がり。そのままスッと歸らうとするから

 まぁお茶でも

 いやいや

 男は頭を搔き搔き土間へ降りた

 あのぉ、御手間は

 要らねぇ。あしは上田の旦那に頼まれて來ただけ。話なら上田の旦那にしてくれ

 って、言はれてもねぇ。二人、顏を見合はせて、男の背を見送ったあと、流しの下を覗き込むと

 へぇ。實に見事。板は隙間一つなく、嵌ってゐた。これでネズミもゴキブリも來ないだらう。何の木かは知らぬが、爽やかな香りが心地よかった 




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2012年10月22日

月の穢れ

 シルベスタは月に一囘、腹が痛くなる。さういふ時は厠の下も血で赤くなる。惡い血が出るらしい

 ひどいときは青い顏をし、臺に肘をついて考へ込んでゐる。しかしこんな時のはうが女らしい。いつもより綺麗に見えるのが不思議

 たまに醫者へもゆく。ちょっと遠い上ツ谷の端っこ。道から一段下がると入り口があり、直ぐに部屋が見える。板敷に男の子が倒れてをり、耳の穴をいぢられてゐる。ざまみろ

 附き添ひの母さんはまだ若い。お姉さんみたいな人。家に歸ったら、飴玉もらへるぞ。耳の痛いぐらゐは我慢しな。けけけ

 ありがたうございました

 二三日でウミが出るでせう。それまでの辛抱だ。なっ、坊主

 坊主と呼ばれた子は顏をもたげ、ニカッとした。氣味が惡い。化物だぞ、こいつ



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