2012年05月22日

辨へ

「人の智慧に限りがあり、すべてが神の思し召しによる他ないのなら、政治家は何もせず、むしろ馬鹿ばかりの方がいいことになりはしないかい」

「それは今の政府が理想的だと言ってゐるのか。しかし、それは違ふな。人には人の行ふべき道があるのであり、人はただのボロットではない。

 前に言ったやうに、世の中には人の思ひもよらぬ問題から、赤ん坊にも判る道理まで色々あるだらう。人には人にも分かる問題がある。人は自分で出來ることは自分で行ふべきなのだ。

 ただ、今のやうに、人が神をも恐れぬほど増長し、すべてを人智で推し量らうとするから物事を誤るのであって、人が自らの分さへ守らぬなら、それはそれでまた大きな災ひの元になるといふことだ」

「さうなると、人の行ふべき道と、人の及ばざる道とを見極めることが大事になるね。それはどこで線引きしたらいいんだ」

「それも古事記にはきちんと書かれてゐる。それを素直に讀めば、その心は必ず現代人にも通ずる筈なのだ。素直に讀めば、の話だが」



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2012年05月21日

ジェノサイド

「かう話し合ってみると、結局、お前さんとあたしの一番の違ひは、人間の判斷力をどの程度信じるか、我々は自分自身をどれほどよく知ってゐるかといふことに歸すると思ふけど?」

「けど何なんだ。俺はあんたのことは何も知らぬし、敢へていふが、自分のことは尚更知らない。これは殘念ながら本當のことだな」

「しかし、その考へ方の相違は、具體的な問題の扱ひについては、どういふ差異をもたらすのだらうか」

「例へば、今は特に世の中にも大きな問題が山ほどあり、それぞれに詳しく考へ、過ちなきやうに解決して行かなければならない譯だが、本當の本當のところは、神ならぬ人の智慧の及ぶ處ではないといふことは、十二分に辨へておかなければならない。

 少々の弊害があるからといって、人の淺智慧でもって物事を變へてしまふと、思はぬ大害を招くことがある。くれぐれも心しなければならない。

 もともと世の中には惡亊善亊と萬にあるものであり、惡亊のみを取り除くことなどは出來ない。譬へて言へば、人の體を傷つけることなしに惡性新生物やウィルスだけを殺す亊が出來ないのと同じ。

 これを強ひてすれば、却って善い部分をも毀ち、つひに死をもたらすこともあるのを思ひ知るべし」






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2012年05月20日

家康

「その素直な原始人の考へ方によれば、惡いことは惡い神がなさり、善いことは善い神が爲さると。さういふ理解でいいのかな」

「理解といふより、内容のない言ひ換えだな。同義反復。この内容の無いといふことが、ここでは好いことなのだ」

「だから歴史の中には悪黨も出、善人も出る。そしてこの考へ方は儒學にも似てゐるやうだけれど、素直なお前樣によれば、必ずしも善人が勝つとは限らない。自分は善だから、天に祐けられたなどといふのは大嘘だと、さういふ譯だね」

「しかし、この國において、惡は不思議に長く持たない。上下ひっくり返れば、世の中全體がをかしくなるけれども、この國は不思議に起き上がり小法師のやうに立ち直って來た。

 足利が朝廷を蔑ろにし、天下が亂れると、信長秀吉といふ梟雄が現れ、天下の太平を導くことになるが、その後を繼ぐ東照神コ川家康は歴史上稀に見る平和を齎した」

「しかし、その世も傾いて來ると、海の向うから赤鬼が現れたよ」

「國、いよいよ亂れたけれども。今度は不思議に穴門、日向といふ古の梟雄が現れ、御門を奉って新しい國を建て直した。これもすべて天照太御神の大御心による賜物であり、我が國が萬國に優れてゐる所以なのだ」

「と素直に考へるのが好いのだと、お前は考へる譯だ。まぁ理論的に無意味だといふ批判は、ここではむしろ逆効果な譯だが」



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