2012年03月22日

コトワリ

「まぁ、さう興奮せずに。ここで冷靜に立ち戻って、お前さんと私の違ふところを見てみようか」

「この世には人の推し測れないコトワリがあるのを認めるか、それとも人が全てを畏れ憚らずコトワルべきであるか、といふ違ひだ。そしてこの俺は神々のことは人の測りがたい領域にあると思ふ。言葉を替へれば、神々のことをさも分かったやうに説くのはマヤカシだと言ふことだ。

 尤も、現代人も樣々な神話を持つのは當然だし、いくら時代後れの俺でも、これを笑ひこそすれ、それを捨てるのが無理なのは分かってゐる。しかし、その神話を元にして、昔の神話を書き變へるのだけは止めようぜ。尤もその書き換へもまた神話の命ずるところなら、もう笑ふしかない譯だが」

「現代の神話って、例へば?」

「いくらでもある。例へば、我々は言語を物を考へる手段のやうに考へてゐるが、むしろ言語の力によってしか物を知覺し、考へることが出來ない。昔の人が言(こと)と亊(こと)を區別しなかったのは、このことをよく知ってゐたからだ。いや、これは現代と昔と、神話が違ってゐると言ひ變へた方がよいかも知れない。

 いづれにせよ、Kといふ言葉を知らなければ、物がKい、と認識することは出來ない。ピンク色を知らない人にピンク色を説明するのは不可能なのだ」

「ふぅん。お前さんの言葉遣ひが普通と少し違ふワケも分かった」



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2012年03月21日

恩知らず

「そもそも古事記を色眼鏡無しに讀めば、天照大御神は高天原を在り、高天原が空の上にあることは普通に讀み取れる。どこをどう誤讀すれば中津にあるだの大和にあるなどと言へるんだらう」

「それは基本的に空の上に原っぱなんかありゃしないといふ常識があるからだらう?」

「常識ねぇ。昔、地球が球體だと聞いた人が、ぢゃ裏側にゐる奴は落ちちゃふぢゃねぇかと笑ったといふ。常識といふのは、我々の日常生活の約束事みたいなものだから、ひとたび未經驗の世界に踏み込むと丸っ切り通用しねんだよ」

「はいはい。ぢゃ分かった。空の上に在って、天を照らしてゐる、ものすごい神樣といへば、そりゃ太陽しかないよね。しかし、太陽は無數にある恒星の一つで、しかも銀河系の端にある星の一つだ。さう大した星ぢゃないと思ふのだが?」

「ほぉ、偉さうに言ふが、もしあの太陽の光が地球に届かなくなったら、地球の穀物は一年内に喰ひ盡くされ、植物は枯れ死に、地球は凍った死の世界になるだらうよ。その無數にあるとか言ふ恒星が擧って地球を温めてくれるとでも言ふのか。下らねぇ理屈をいふのも大概にしろやい」




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2012年03月20日

天國

「だんだん、話が大きくなって來たけど、少し話を小さくしていいかい?天照大御神といふ神樣がいらっしゃる。この天照大御~のお住みになる都は天ではなく、豐前の中津である、いや、大和だと言ふ説がある。これを、どう思ふ?」

「急に小さい、いや、詰まらない話に持って行ったね。そんな馬鹿なことを平氣で言へるやうになるのが小理屈といふヤツのいやらしいところだ。己の理解を超えるものを、全て自分の淺はかな料簡で割り切らうといふ、學者といふものが大抵は陥って來たヨコシマの道だよ」

「おや、言ひ切ったね。その考へこそ邪道といふことはないのかい。世の中の學者があんたより低能だといふ確率は、ほとんど無いと思ひますけど?」

「幸ひ俺は低能だから陥らないんだよ。朝鮮から倭の日向へ下ったのを天孫降臨といふとか、女帝を天照太御神といふとか、さういふ風にいちいち神話の出來亊を都合よく言ひ換へて行くなら、神話など引き合ひに出さず、手前が勝手に歴史を書けばいい。神話の方で迷惑なんだよ。

 その天照大御神の都がどうのといふ説も、大方、豐前の中津を“天と定む”とかいふ記述を、勝手に“都に定める”といふ意味だと解釋したり、或は、大和には天の香具山があるからだとか言ふんだろ?」

「いい解釋だと思はないかい?」

「そんな馬鹿な理屈が通るなら、群馬縣と長野縣の間に高天原といふ名の山がある。そこが天國だとでも新説を出すのか?」




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