2012年03月28日

木の菓

「しかし、あんたが人からどう思はれようが知ったことぢゃないと言っても、人がどう思ふかもまた人の自由。

 それで私なりにあんたの心の中を想像するに。あんたの心の中には、幾層にも積まれた地層のやうなものがあって、生まれた時から今までのあんたが、あたかも木の年輪のやうに埋め込まれてゐるのぢゃないか」

「ようも人の心をバウムクーヘン扱ひしてくれたな。それを言ふなら、生まれてこの方ぢゃなく、人類がこの世に誕生したときからの記憶が、生物にはすべて埋め込まれてゐるやうに思へる」

「その“思へる”って云ふ言ひ方は便利だねえ。いっそ“と俺には思へる。これは個人的感想です。”を“。”で單語登録しておいたらどうかね。さうしたら、明日はゼッテー雨だなと俺には思へる。これは個人的感想です。とか?

 まぁそれはいいとして。人には、その生物としての歴史がバウムクーヘンみたいに埋め込まれてゐる。當然、その中心に近い部分は普段は表に出て來ないが、いつもマグマのやうに心の底では煮え滾ってゐて、時に噴火で出て來ることもあると」



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2012年03月27日

大義

「俺が、もし敵が攻めて來たら無條件に戰ふと言ったのは、出任せぢゃない。ある程度の自信があって、さう言ふんだ。俺だって臆病なところがあるし、死にたくもない。

 しかし、俺のお親父も、その親父も、母親の親父も、日露戰爭や大東亞戰爭で戰ってゐる。もし自分にその晩が來たら、迷ふことなく武器を手に取ると思ふ」

「まぁ、お互ひ、もうその可能性のない年になっちゃった譯だけど。ここは若い人の爲に、もう少し話を詰めて置かうか。人間、思ひがけない時に、瀬戸際に追ひ詰めらるものだらうから。

 その、あんたが無條件に戰ふといふ氣持ちは、もし言葉に表すとしたら、どんな氣持ちなんだらうか」

「だから、それがうまく説明出來ないっつぅの。三島由紀夫だって、うまく説明出來ないからこそ、最後はああいふ形で死んだんだらう。彼ほどの頭があれば、自分の行爲が大衆に理解されるとは夢にも思はなかった筈だ」

「さうだね。大衆の理解を拒否するエリート主義。さういふのがあるかも知れない」

「それはちょっと違ふな。別に拒否する譯ぢゃないんだ。實際、十七八で死んだ若い特攻隊員だってゐるんだよ。そんなエリート主義なんか糞喰らへだ。自分の中で死の遺傅子が目覺めた、そんなのとも違ふな。

 人から理解されるかどうか、そんなことはどうでもいい、さういふ自己充足した氣持ちだらう。さうでなければ、あの若さでなかなか死ねないものだ」



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2012年03月26日

マイノリテ

「といふわけだから、一口に國を衞るといったって、ことは簡單ぢゃないのは分かるだらう。もしあんたが自衞官だとして、もし中國が尖閣諸島を攻めたり、韓國が對馬を奪取したりしたら、戰ふのかい?戰ふといふことは、時に命を捨てることもあるんだ。その命を捨てるかも知れない危險を何の爲に冒す?」

「議論をしながら、かう言ふのも何だが、その答へは見つからないと思ふよ。確かに三島由紀夫は頭のいい人だったから、そんなことを考へたかも知れないし、考へることは大切だとも思ふが、いくら考へても結論の出ない問題といふものがある。あんたの提起した問題はその種の問題だと思ふ」

「ぢゃ、議論抜きににしても、あんたは戰ふわけだ」

「そらさうだ。そこで戰はないと言ふ男は、病人か、よほど想像力のない人間だと思ふ。だいち、そこで戰はないやうな民族は、人類の戰爭の歴史の中で、みんな滅んで來たんぢゃないか。ネアンデルタール人やジャイナ教徒は、今は余り見かけなくなった。

 今殘ってゐる民族は、戰爭に負けたばかりの獨逸や日本を除いて、若者の多數はほぼ無條件に戰ふと言ふだらう。實際にどれだけ自己犠牲をするかはわからないけど」

「あんたも日本人ぢゃないのか?」

「俺はほとんどが少數派なんだよ。俺が日本人の中で多數派だと思ふのは、血液型がA型なのと、お金はそこそこにある方がいいと思ってゐることぐらゐだ」




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