2011年07月22日

おほみづ 十七

 そしてまた、神は云った。
「地の全てのケダモノ、鳥、蟲、魚は、お前たち、ナとその子らのものだ。生き物はすべてお前たちの専用フーヅになるだらう。ベジタブルと同じく、これらはすべてお前たちのものだ」

「なるほどなぁ。ケダモノも鳥も蟲も魚も、煮て喰はうが燒いて喰はうが、原則的には自由だといふことだな。しかし、いつのまにか神樣がケダモノたちにも同じやうな約束をしてゐたらどうなる?さうならないやうに祈りたいものだが」

 「人間に壽命がある限り、結局は死ぬことになる。假に惡性新生物やウイルス、細菌のやうなものに殺されなくても、必ず微生物や火力によって炭素や水などの無機物に分解されてしまふ。ケダモノたちに比べても大した幸福な人生だとは思へないがな。まして人は原發問題だの温暖化問題だのパンデミックだの年金問題だの高齡化問題だの財政問題だの、いつ果てるとも知れない大問題ばかり、一人で抱へ込んでゐるのだからな」

「うへぇ。厭なことを言ふな。お前は人間が生き物の頂に立つ、特別な存在であることを認めないな?」

「そんな抽象的議論は、人生の複雑さ、苦しさ、重さに比べたら屁みたいなものだ。とっとと學校へでも通って教へてもらふがいい」



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2011年07月21日

おほみづ 十六

 神はナとその子らを祝った。
「産め、殖え、榮えよ」

「愚か者が増えたら、また同じことになるぞ。神はなぜ自分で理想の者を造らないのか」

「知るか。その問題は昔から謎とされ、色々な答へが用意されてゐるが、一つとして良い答へがない。おのおのが黙って自分の頭で考へろ。但し思ひつきを人に言ふな、自慢たらしく。馬鹿丸出しだからな」

「殘念ながら、俺は眞っ直ぐな男だ。馬鹿を丸出しにしてどこが惡いのだ。もし神が自分の理想の者ばかりを造ったら、この世は神のレプリカばかりになってしまふだらう。本物の花の横に安物の模造品を竝べてどうするのだ?そしてもし理想通りではない者を造れば、その分だけ理想ではない状態が出來るだけのことだ。わざわざ惡い状況を作って何の樂しみがあるのだ?」

「しかし、徐々に進歩するかも知らんぞ」

「進歩して理想通りになるのが理想なら、初めからヘンなのを造るな。もしその經過こそ樂しみだったといふなら、途中で患ひ苦しみ、敗れ去った者はどうなるんだ?」

「俺に聞くなって。最初から知らんと言ってゐるぢゃないか」



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2011年07月20日

おほみづ 十五

 ナ達は船を出た。動物達もだ。ナは神を祭る支度をした。清い家畜と清い鳥の中を潰して燒肉にし、香ばしい煙を立てた。

 神はその煙を嗅ぎながら、
「可愛いものだ。愚か者の彼らは、何度でも過ちを犯すだらうが、もう餘り酷くは責めまい。その代はり、生きて行く人間には種蒔と刈り取り、暑さと寒さ、夏と冬の嚴しさ、晝と夜が繰り返されるだらう」

「燒肉ねぇ。神の好みといふより、人の好みぢゃないのか?倭の國では、神に捧げるのは海の幸、野の菜と決まってゐて、獸の肉や血は避けたものだ」

「本當の神の好みなんか分からないからなぁ。その場合、人が自分の目と鼻で良いと思ふものを選ぶ他はないだらう。やはり人は神に似せて造られた、と勝手に決めたのも人間だらうからだ」



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