2011年03月31日

あをくも 九

「しかしこんな閑な日も偶にはいいなぁ」

「さうよ。これで靜さへ來なきゃ最高だったんだけどなぁ」

「何だよ、その靜かって」

「靜って、あの清掃の・・・」

「清掃?」

「掃除の小母さんだよ、何て云ったけなぁ。みんな靜って云ってる女」

「靜かなんて人、ゐたっけ?」

「中で遇はなかった?十分ぐらゐ前に入ったよ」

「何で休みの日に清掃が來るんだ」

「知らねぇ」

 靜かといふのは、多分、吉野といふ清掃員だらう。最初に來た時、自轉車に跨り、ダブダブの雨合羽を被ってゐた。彼女の名前が確か靜だった。

posted by ゆふづつ at 19:59| 日記 | 更新情報をチェックする

あをくも 八

 鳥飼が飯を喰ふ間に館内の巡囘を濟ませ、戻って來た。

「何か罐詰を喰ったネ。鮭罐か」

「濟まねぇ。ひょっとしたらと思ったんだけんど。つひ手が出ちまった」

「おいおい、自分のを喰ったんぢゃねぇのか」

「いやいや、ロッカの上の棚に在ったから、自分が持って來たのかなと思って」

「ん?ロッカって、一番右のか。鮭罐は俺のぢゃねぇぞ」

「あ?ぢゃ、やっぱ、俺のか」

「憶えてねぇのか。仕方ねぇなぁ。まぁいいや。誰かが入れたまま忘れてんだらう」



posted by ゆふづつ at 09:00| 日記 | 更新情報をチェックする

2011年03月30日

あをくも 七

「ある時、男と女がよぉ、線路を枕にして寢てたんだとさぁ」

「線路を枕とは、風流も首が冷た過ぎべぇ」

「なに、直きさ、あの世に行かれるべぇ」

「いつの話だ」

「だからさぁ、おいらが子供の頃の話だってさ」

「そんでどうした」

「向うからトロがゴロゴロ走って來てなぁ」

「そんでどうした」

「ぶつっとやな音がしてなぁ」

「心中かい」

「十八九の若いもんぢゃったさうぢゃが」

「死ぬこたねぇのになぁ」

「わけは判らねぇ。他所から來たもんぢゃったからなぁ」

「それがその邊りか」

「B門の」

「詳しく言はなくてえぇぞ」

posted by ゆふづつ at 00:00| 日記 | 更新情報をチェックする

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